先日、駅のホームで「KING&QUEEN展」と書かれたドデカイ看板を発見しました。調べてみたところ、上野の森美術館で10月10日〜1月11日まで開催されている、英国王室関連の名画の展示会とのこと。この看板を目にして「トランプのキングとかクイーンにモデルっているのかな?」とふと思ったので調べてみることにしました!
いっぱいいる〜! マークによって異なる絵札のモデルたち!
調べてみたところ、K・Q・J全てにモデルが存在することがわかりました。それも、スペード・クラブ・ハート・ダイヤのマークごとにモデルが異なる模様。万国共通のカードゲームのモデルになる人物はどんな人たちなのか! 解説していきたいと思います!
まずはキング! そうそうたる面々!
スペードのK
ダビデ王
誰もが一度は見たことのあるダビデ像ことダビデ王! しかし、ダビデ王がどんな人なのかを知らない人は多いハズ(筆者も知りませんでした)。簡単に説明すると、イスラエルを強大な国へと発展させた偉大な王(イスラエルの2代目の王)。40年間イスラエルを統治してきた偉大な王ですが、女性にめっぽう弱く、多くの妻をめとり家庭内での争いが絶えなかったとか…。
クラブのK
アレキサンダー大王
こちらも超絶有名な王様! 正式名称はアレクサンドロス3世。祖にヘラクレスやアキレウスといった英雄がいる由緒正しい血筋の王様です。20歳で王位を継承してから、軍師の才能を発揮してマケドニア王国の最盛期を築き上げました。中でも有名な功績は「4500kmに及ぶ大遠征を成し遂げた」ことでしょう。今ならまだしも紀元前300年代のこと…日本でいうと弥生時代。日本人が田畑をやっと耕し始めた頃にアレキサンダー大王はそんな偉業を成し遂げたわけです。そりゃあ世界の偉大な王として有名にもなりますね。
ハートのK
カール大王
日本人にはあまり馴染みのない名前かもしれませんが、70歳すぎて死去するまで43年間も王に君臨し、フランク王国の最盛期を作った偉大な王。ドイツやフランスの人々から英雄として讃えられていて、「ヨーロッパの父」として今もなお愛されている王様の1人です。ちなみにカールおじさんとは何の関係もありません。
ダイヤのK
ユリウス・カエサル
ユリウス・カエサルはKの中で唯一王様ではなく、ローマの政治家・軍人・文筆家です。「賽は投げられた」や「ブルータス、お前もか」といった超有名な句で知られています。王にはなれませんでしたが、「古代ローマ最大の野心家」として終身独裁官の地位を獲得したツワモノです。世界中にいる名だたる王様を差し置いての堂々のモデル入りです!
お次はクイーン! スケールがデカイ!
スペードのQ
アテナ
知恵・芸術・工芸・戦略を司るギリシャ神話の女神! 人じゃなくて神です! ゼウスの頭から武装した姿で生まれたそうです…なんのこっちゃわかりません! どこぞの王妃がモデルかと思ったらまさかの女神がモデル…もうKよりも強い手札でいいんじゃないかな、とすら思ってしまいます。
クラブのQ
マリーダンジュー
マリーダンジューはフランス王シャルル7世の王妃。お次も女神と思いきや、クラブのQは人間です。シャルル7世には妾がいて、シャルルの愛情はその妾にそそがれていましたが、マリーは寛容で妾との仲は良好だったそうです。なんともデキた王妃です…。ちなみにシャルルとの間には子供が12人もいたんだとか! 元祖肝っ玉母ちゃんに任命です。
ハートのQ
ユディト
旧約聖書の続編の1つである「ユディト記」に登場する女性。物語の内容は、ユディトが敵陣に乗り込んで敵が泥酔している間に敵の首を切り落として国を勝利に導く…といった内容。「ユディト記」にはいろんな説があり、架空の物語という説やユディトはカール大王(ハートのK)の義理の娘という説があります。もしもカール大王の義理の娘だとしたらハートのQということにも納得がいきますね。
ダイヤのQ
ラケル
旧約聖書の「創世記」に登場する女性でヤコブの妻。ヤコブはラケルに一目惚れをし、ラケルの父に結婚の許しをこいます。ラケルの父の結婚の条件は「7年間タダ働きをすること」。とんでもないことを言い出しましたが、どうしてもラケルと結婚したいヤコブは7年間の労働を達成! しかし、初夜にやってきたのはラケルではなくラケルの姉のレア。なんと、姉より先に妹が結婚することを良しとしていない風習だったらしく「ラケルと結婚したいならレアと先に結婚してさらに7年タダ働きして! そしたらラケルとも結婚させてあげる〜」とのこと。結婚詐欺の最上級! ヤコブも諦めると思いきや、なんともう7年働いてラケルと結婚することにしました。それだけラケルは魅力的な女性ということです。それにしても、アテナだのヤコブだの小宇宙を感じざるをえませんね…。
最後はジャック! なんだかフワフワ!
スペードのJ
オジェ・ル・ダノワ
中世フランスのシャルルマーニュ伝説の武勲詩に登場する伝説上の英雄。中世・初期近代ヨーロッパで高位の騎士(パラディン)の1人として、剣術に長けた人物だそうです。デンマークでは地元の英雄とされて親しまれています。
クラブのJ
ランスロット
ランスロットはアーサー王物語などに登場する円卓の騎士。アーサー王の王妃と禁断の恋に落ち、円卓の騎士の分裂の一因となった人物です。王様の王妃に手を出すなんて凄いとんでもないことをしでかす人物ですが、きっと王妃も好きになってしまうくらい魅力的な騎士だったんでしょうね…。日本でもたびたびゲームなどで登場するランスロットですが、アーサー物語のランスロットがモデルなんでしょうね。
ハートのJ
ラ・イル
正式名称はエティエンヌ・ド・ヴィニョル。百年戦争後期で活躍したフランスの軍人です。ジャンヌ・ダルクの戦友として知られている人物。いろんな王に使えて目覚ましい武功を上げましたが、少し正確に難があったようです…。愛称である「ラ・イル」は古仏語で「憤怒」という意味で、エティエンヌの粗暴で怒りっぽい性格を皮肉って付いた愛称のようです。
ダイヤのJ
ヘクトール
ギリシャ神話の英雄でトロイア(ギリシャ神話に登場する都市)の王子であり、トロイア戦争におけるトロイア最強の戦士! 戦場の外では善き夫であり善き父でもある正真正銘のナイト。最後は敵国に破れて殺されてしまい妻を敵国の王子にとられてしまいますが、「国に殉じた男、かけがえのない日常生活を守るため死んでいった英雄」として讃えられました。非の打ち所のないイイ男ですね!
以上がK・Q・Jのモデルですが、みなさんはどのように感じましたか? モデルになるのも納得な人物もいれば、なぜにこのチョイス? と思う人物もいたことでしょう。モデルなのに架空の人物も多いのでしっくりこない人もいたかもしれません。トランプの発祥はヨーロッパなので、そっちよりの人選ということもありあまり馴染みのない人物も多いですが、興味が湧いた方は上野の森美術館で開催されている「KING&QUEEN展」に足を運んでみてはいかがでしょうか? 王室の勉強になるかもしれませんよ(絵札のモデルたちの画は1枚も展示されていませんけどね…)!
KING&QUEEN展の詳細はコチラ→上野の森美術館・ロンドン・ナショナル・ポートレートギャラリー所蔵 KING&QUEEN展