「崩れた高収益構造」
オンラインカジノへ海外のカジノ事情に詳しい鳥畑与一静岡大学教授は以下のように分析する。「日本に進出を目指してきたIRの運営を行うカジノ業者の多くがコロナ禍で業績が悪化していて、特に第2四半期はさらに赤字が膨らむと予想される。大阪に進出を予定しているMGMリゾーツは、いくつかの米国にあるカジノ施設を売却して80億ドルの資金を調達してこれを日本への投資に向けようとしたものの、コロナ対策で手元資金と投資資金を使い果たしてしまい、また売却した施設をリースバックして使うため借金が増加するなどして、その目算が狂ってきている。(中略)仮にフル操業になったとしても、これまでのようにカジノにスロットマシンやテーブルに客を詰め込んで、高収益をあげることは難しい。コロナ禍の経験から、これからはカジノ施設など室内から、オンラインによるギャンブルに変わって来るのではないだろうか。米連邦最高裁判所は2018年に、プロ野球、プロバスケットボール、アメリカンフットボールなどプロスポーツを賭博の対象とすることを合法とする判断を示した。これからはオンラインのギャンブルにシフトして、観客も感染を警戒してリモートで参加するようになるのではないか。そうなると地上の巨大なカジノ施設などは不要になってしまう」
世界が変われば未来も変わる
コロナによるマイナスの影響をモロに食らった世界の観光産業。各国のカジノにおいても収益は軒並み激減し、あのラスベガスサンズですら「キャッシュフローに不安」などと囁かれるほど深刻な事態に。もちろん日本も他人事ではなく、カジノ専門家からは計画を部分的に見直すべきとの声も上がっている。もとよりIRとは、カジノのみならずMICE施設等の様々な誘客施設が一体となったリゾート計画の総称。施設以前に、事業全体の収益構造や経済効果がなにより重要なのだ。
本当に箱モノカジノでいいの?
行動変容した新しい世界で、今の日本版カジノに果たして勝算はあるのか? 次世代ニーズは急速ににオンラインへシフトしている。世界と渡り合える産業となるためにも、関係者には明確なビジョンを持って日本版IRの実現に取り組んでもらいたいところだ。