8月初めにトランプ大統領が共和党や自身の最大のスポンサーであるシェルドン・アデルソン氏(87)と電話で口論し、関係が悪化したと「ニューヨーク・タイムズ」(NYT)が報じた。その後、両者の電話会談について米国ではメディアが追随して問題になっている。「NYT」「Politico」など、複数のメディアによれば次のようなものだ。
アデルソンはトランプとの緊急電話会談で新型コロナウイルスへの経済対策が不十分だと指摘した。ところがトランプは11月の大統領選に向けてアデルソンの支援が足りないと批判、口論になった。民主党の大統領候補であるジョー・バイデン陣営のほうが資金調達が多く、確保したテレビCM枠も大幅に上回っているという。
アデルソンは、米大手カジノ・ラスベガス・サンズの創業者でありCEO(最高経営責任者)。推計で約315億ドルの個人資産があるとされる超金持ち。夫婦で共和党やトランプ大統領に対して2016年には8258万ドル、2018年には1億2325万ドルなどに過去20年間で約3億8000万ドルの資金提供をしてきたとされ、2016年のトランプ大統領就任式のために500万ドルを寄付している。トランプの最大の支援者だった。
日刊ゲンダイDIGITAL 2020年8月19日:https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/277495
頻繁に電話会談するほどの仲に亀裂?
アデルソンはトランプの大統領選挙の際、自身と妻の名義で2000万ドルを献金、大統領就任イベントでは500万ドルを出資した。また、日本政府がカジノ解禁を持ち出したのは、トランプ大統領がアデルソンのために安倍首相に口利きをしたのが発端と言われている。この2人、ただ親密というだけでなく、さまざまな局面でギブ・アンド・テイクの関係が成立していたように思えるが…
アデルソンの本音は中国と仲良くしてほしい?
現在、サンズの頭を悩ませている問題に米中貿易摩擦がある。じつは売上全体のおよそ6割はマカオにある5つのカジノが生み出しているもの。しかも、サンズ・チャイナが運営するそれらのカジノライセンスは2022年に失効、再入札が予定されており、その入札には中国政府が大きな影響力を持つとされる。トランプ大統領が中国を目の敵にする政策を取れば取るほど、それを下支えしているサンズのライセンス継続に対するリスクが高まっていくという見方もできるわけだ。
トランプの働きに不満を抱くのは当然か
コロナ禍による世界的な渡航制限で収入を大きく削がれ、日本市場も政府の条件が厳しすぎて渋々撤退、マカオでは商売の継続に暗雲が立ち込めるという三重苦… そんな中で「支援が足りないぞ」なんて言われたら、アデルソンでなくてもブチ切れたくなるところ。金の切れ目が縁の切れ目になってしまうのだろうか?